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一般講演 P3-109

栄養塩パッチをめぐる競争における物理的障害とアサガオ(Ipomoea tricolor)個体のサイズとの関係

*中村亮二・可知直毅・鈴木準一郎(首都大・理)

土壌栄養塩がパッチ状に存在する環境下の植物個体は、パッチを探索し、そこに根系を選択的に配置する。また近隣個体よりも早くパッチへ到達した個体は、効率的な栄養塩獲得が可能となるため栄養塩をめぐる競争で有利となる。とすれば、パッチとの間に物理的障害物がある個体や、パッチとの距離が相対的に長い個体は、栄養塩獲得に不利と予測される。本研究ではソライロアサガオを用いた栽培実験によりこのことを確かめた。

施肥および物理的障害物に関する2要因実験を行なった。施肥については2条件設定した。不均質条件では直方体の容器の中央に肥料をパッチ状に、均質条件では同じ量を容器内全体に均等に施した。容器を長辺で2分したそれぞれに、1個体のアサガオを植え付けた。障害物については、個体とパッチとの間の障害物の有無と、個体とパッチとの間の距離の違いとの組み合わせにより、5条件を設定した。地上部の競争は生じないようにした。

発芽から8週間後に刈取り、個体の乾燥重量(サイズ)を条件間で比較した。ほぼ全ての条件で、同じ容器内の2個体間にサイズの違いは認められなかった。またどの条件でも、2個体のどちらのサイズが大きくなるかは個体の置かれた状況にはよらなかった。2個体の和である収量には、施肥と障害物の各要因に起因する有意な違いは認められなかった。

容器内のどちらの個体が大きくなるかは障害物の有無やパッチとの距離によらず確率的に決まっていた。このことは、相対的に有利な個体とそうでない個体との間で、栄養塩獲得において予測された程の違いが生じなかったことを意味する。これは、生育の初期に個体が効率的にパッチを探索できなかった結果であると推察された。

日本生態学会