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一般講演 P3-116

鳥取砂丘における砂丘植物の個体群構造とその変化

*富永彩恵(鳥取大・院・教育)・永松大(鳥取大・地域)

鳥取砂丘は国立公園及び天然記念物に指定されている日本で唯一の海岸砂丘である。1970年代から砂の固定化が進み、外来植物の侵入によって砂丘の草原化が地域の社会問題となった。この対策として1991年より外来植物の除草作業が行われている。鳥取砂丘の植物群落についてはこれまで永原(1968)、清水・永田(1980)、清水・柴田(1992)により主に行われてきた。しかし、人為的な管理が進む一方、植物の分布構造や個体群構造についての研究は進んでいない。そこで本研究では、GPSを使って鳥取砂丘の正確な植生図を作成し、大規模な海岸砂丘における砂丘植物の分布構造を明らかにすることを目的とした。調査は鳥取砂丘の特別保護地区にて2006年8月に行った。GPS(Trimble社)で各群落の輪郭を計測し、位置と大きさを確定した。各群落内に縦横10m間隔で1平方メートルのコドラードを設置して真上からデジタルカメラで撮影し、画像処理によって種別に被度を求めた。ArcView9(ESRI社)上で、被度を用いて数値分類し、植生図を作成した。次にコドラード設置点、海岸線からの距離、2006年4〜10月(6月を除く)の土壌水分指数、地形的な変数(斜度、傾斜方向、地形指数)をそれぞれ整理した。これら5つのパラメータを独立変数、各植物の被度を従属変数としてポアソン回帰をおこなった。優占種のうちコウボウムギは海に近い、斜面の急な、土壌の乾燥した場所、ケカモノハシは北向きの斜面の場所、コウボウシバは傾斜の緩い、土壌の湿った場所に存在する確率が高いことが示され、これより鳥取砂丘で優占する植物はそれぞれ少しずつ異なる環境を好む可能性が高いと考えられた。

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