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一般講演 P3-135

都市近郊林におけるミヤマナルコユリのrametの動態

*粕谷絵美子(明治大・院),倉本宣(明治大)

ミヤマナルコユリPolygonatum lasianthumは、雑木林の林床下に生育するユリ科の多回繁殖型多年草であり、日本全国に分布する。小面積の林に出現しなくなる傾向がある種として報告されているが、本種に関する研究はほとんどなく、個体群動態について明らかにしたものはない。

2005年7月〜8月に東京都町田市内の大小さまざまなコナラ‐クヌギ林において分布調査を行ったが、開花個体はほとんどなく、また種子をつけた個体も少なかった。2005年の調査では元々開花個体が少ないのか、それとも開花後から調査時までの間に枯死したのかを明らかにすることは出来なかった。そこで本研究では、展葉してから地上部が枯死するまでのラメットの動態を調査し、開花・結実状況、枯死する時期を明らかにすることを目的とした。

調査地は図師小野路歴史環境保全地域(東京都町田市)とした。保全地域内の本種の生育する林床に2m×2mのコドラートを5ヶ所設置し、コドラート内の全ラメットにマーキングを行い、追跡調査を行った。また、データロガー(気温、地温、土壌水分)を設置し、1回/hの頻度で測定を行うように設定した。

2006年4月〜12月まで、計126ラメットの動態を追った。5ヶ所のコドラートのうち4ヶ所では10月までに全ラメットが枯死し、残り1ヶ所においても12月には全ラメットが枯死した。調査の中で、ヒゲナガクロハバチ Phymatocera nipponica による食害が確認された。また、コドラートや葉数によっても枯死する時期が異なることが確認された。

以上の結果と環境要因をあわせて、本種のラメットの動態について考察する。

日本生態学会