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一般講演 P3-139

ニジマス除去後におけるイワナ個体群の反応

山本聡(長野水試), 河野成実(長野水試), *北野聡(長野環保研)

長野県北部の志賀高原を流れる雑魚川は天然イワナの生息水域として知られるが,約20年前に放流された外来ニジマスが河川上流域に定着し,自然再生産が確認されるようになった.そこで,漁業協同組合の同意のもと,電気ショッカーを用いてニジマスを選択的に除去する一方,在来イワナの生息密度,体サイズ,肥満度の各個体群パラメータを除去前の2003年から除去2年目の2005年まで定期的にモニタリングし,外来ニジマスによる在来イワナ個体群への影響把握を試みた.定着域は上流域の約1kmの緩勾配区間に限定されており,除去1年目の2004年には採捕4回で72尾を,翌年には採捕3回で12尾のニジマスを除去し,ニジマスの生息密度を明らかに低下させることに成功した.ニジマス除去の効果をイワナの個体群パラメータの変化から検証したところ,次のような結果が得られた.ニジマス定着域(2区間)および非定着域(2区間)のイワナの推定密度は100m 2 あたり46〜117尾の範囲にあり,いずれの年もニジマス定着域と非定着域で有意差はなく,またニジマス除去によって定着域のイワナ密度が上昇する傾向も認められなかった.一方,イワナの平均体長については,いずれの年もニジマス定着域のほうが非定着域よりも小さかった.イワナの個体群パラメータのうちもっとも顕著な反応が認められたのは,肥満度であった.ニジマス定着域のイワナ当歳魚の肥満度は,ニジマス除去前には非定着域よりも有意に低かったが,ニジマス除去に伴い増大し有意差が認められなくなった.以上の結果より,外来ニジマスは在来イワナ個体群に対していくつかの生活史段階でマイナスの影響を与えていると考えられたが,とくにイワナ当歳魚が顕著な影響を受けることが示唆された.

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