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一般講演 P3-141

セイヨウオオマルハナバチの野生巣のコロニー成長と繁殖能力

*井上真紀(東大・農),横山潤(東北大・生命科学),鷲谷いづみ(東大・農)

ヨーロッパ原産のセイヨウオオマルハナバチBombus terrestris (以下、セイヨウ)は、在来マルハナバチ類および共生関係にある植物への生態学的影響が懸念され、2006年9月に外来生物法の特定外来生物に指定された。今後はすでに野外に定着した個体群の制御が重要な課題となる。そのためには、セイヨウの生態学的知見、特に営巣特性や繁殖様式を明らかにする必要がある。しかし、マルハナバチは巣の発見が困難であることから、自然巣を用いた研究はほとんど行われてこなかった。本研究では、北海道胆振地方で2004〜2006年にかけて発見したセイヨウの37の野生巣のうち、発達段階の異なる25巣を採集して分解調査を行い、営巣特性やコロニー成長、繁殖能力を明らかにした。発見した巣の多くは、水田や耕作地の畔、河川敷などの小動物の古巣を利用して作られていた。コロニーの発達段階は、片山・高見澤(2004)に基づき、創設期、発達期(7巣)、成熟期(12巣)、衰退期(6巣)に分類した。創設女王は25巣のうち14巣で不在であり、巣の発達に伴い創設女王が生存している巣の割合は減少した。平均総生産繭数は、成長期104.7、成熟期387.0、衰退期420.4だった。平均新女王生産数は、成熟期98.9、成熟期130.8であり、総生産繭数に対する割合は、成熟期21.0%、成熟期33.8%だった。これらの結果から本調査地域では、5月後半〜6月前半にかけて営巣が開始され(創設期)、6月後半頃の働きバチの出現に伴い、7〜8月に生産繭数は大きく増加(成長期)、新女王は7月後半に、オスは7月前半と8月後半〜9月にかけて生産され(成熟期)、9月後半には生活史をほぼ完了する(衰退期)と推測される。

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