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一般講演 P3-144

日本における外来植物の侵入年代・原産地とその用途との関連性を探る

村中孝司(東大・農)

既存の科学的知見に基づいて,2006年までに野生化した日本の外来維管束植物のリストを作成するとともに,海外における文献を含めてリストアップされた外来植物の分類群,原産地,生活史,侵入経路(用途),日本における渡来(確認)年代に係る特性を検討した.リストアップされた外来維管束植物は合計154科2,235種(亜種・変種)に達しおり,そのうち鑑賞859種,薬372種,食308種,飼料・牧草225種,木材・資材等161種,緑化125種の順に多かった(ただし複数の用途を持つ種を含む).江戸時代以前は主に観賞用・薬用の植物が移入されており,明治から戦前にかけても観賞植物の割合は高い状態を維持したが,江戸時代が主に東アジア原産の種の持ち込みが多いのに対し,明治以降は欧州原産の種が増大していた.江戸時代末期以降には飼料・牧草,および緑化植物の移入の割合も増加した.飼料・牧草および緑化植物のうちそれぞれ40.4%,34.4%が欧州原産の種と最も高い割合を示していたが.緑化植物については東アジア原産の種も33.6%とそれに次いで高く,それらはマメ科メドハギ属・コマツナギ属およびキク科ヨモギ属などの緑化植物が1990年代以降に中国から多量に持ち込まれたためと推測された.雑草とされる種(1020種)の割合は,北米や欧州などとの自由貿易が開始された江戸時代末期以降に急速に増加し,そのうち36.5%が欧州原産と最も高かった.また,北米原産の種においても雑草と推定される種が多かった.外来植物の侵入は江戸時代末期の開国および終戦が外来植物の多量移入のきっかけとなっており,各々の年代における外来植物の原産地や用途はその時代の国交や国内の社会情勢を概ね反映したものとなっていることが明らかにされた.

日本生態学会