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一般講演 P3-157

北海道美唄市におけるニセアカシアの分布現況と歴史的背景

*山田健四,真坂一彦(北海道立林業試験場)

旧産炭地である北海道美唄市近郊を対象に,侵略的外来種ニセアカシア Robinia pseudoacacia の現在の分布域と分布の歴史的背景について調査した。他の落葉広葉樹に比べて春の開葉が遅いニセアカシアの特性を利用し,2002年5月7日に撮影された高解像度人工衛星Quickbirdのマルチバンド画像の教師付き分類結果および現地踏査により,対象地域のニセアカシアの分布を把握した結果,調査対象である100km2内の分布面積は1.06km2(106ha)と計算された。ニセアカシアの分布は低標高の山地森林に多く,1982年に開通した高速道路沿線に集中していた。得られたニセアカシアの分布域を対象に,過去の空中写真や地形図から土地利用を判読した結果,現在のニセアカシア分布域の過半数(53.6ha)は森林のまま推移したと分類されたものの,これに次いで農耕地(30.9ha)もしくは石炭産業関連施設(13.0ha)として利用された履歴を持つと分類された分布面積が多かった。ニセアカシア分布は高速道路周辺に集中していると見られたが,高速道路開通に伴って形成された裸地におけるニセアカシアの分布は3.4haと僅かであり,高速道路開通以前の土地利用の影響が大きいと考えられた。生態学的に問題視されることの多い河畔林におけるニセアカシアの分布面積は1.9haであり,相対的には少なかった。これらのことから,放棄された農地や炭鉱跡の空き地など,管理放棄された土地の発生がニセアカシアの分布拡大に大きく貢献していることが示唆された。

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