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一般講演 P3-178

神奈川県におけるアライグマの個体群密度の推定

*石井宏昌(横浜国大),松田裕之(横浜国大)

アライグマ(Procyon lotor )は2005年に外来生物法で特定外来生物に指定され、全国各地で捕獲事業が行われている。神奈川県では1988年頃に鎌倉市で生息が確認されて以来、三浦半島を中心として分布域が拡大している。それに伴って、捕獲数は平成12年度の6市町村217頭から平成16年度の13市町村974頭へと年々増加している。アライグマ対策を考える上で、現在の分布状況を把握することは、アライグマによる被害が及ぶ範囲の特定や、分布拡大のプロセスを解明する上で重要な情報となる。そこで本研究では、神奈川県におけるアライグマの個体群密度を統計的手法により推定した。

神奈川県を約1km四方の2598の区域(3次メッシュ)に分け、区域ごとの捕獲数と捕獲努力量のデータを神奈川県から情報公開請求により入手した。これを元に、位置情報(座標データ)の多項式を独立変数、単位努力あたり捕獲数(CPUE)を従属変数とする回帰式のパラメータを推定し、得られた回帰式より、捕獲効率を考慮して個体群密度を求めた。パラメータ推定には、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いた。捕獲効率については北海道の調査結果(北海道自然環境課、2003)を用いた。また、捕獲実績はないが、痕跡調査と聞き取り調査による生息情報をもとに分布域を求めた研究(田畑ら 2006)によって生息が確認されている地域については、得られた回帰式から密度を推定した。ただし、多くの市町村では混獲の情報や罠を仕掛けても捕獲がなかった場合の情報が抜けていること、誘引餌として使用される餌の種類にばらつきがあること等から、今回使用した捕獲データには多くの測定誤差が存在することに留意する必要がある。

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