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一般講演 P3-185

小笠原諸島固有植物ムニンハナガサノキは雄性両全性異株か?

*西出真人(首都大・院・理・生物),齋藤けい子(都立大・理・生物),加藤英寿,菅原敬(首都大・院・理工・牧野)

機能的な雄性両全性異株、すなわち雄個体と両性個体が共存する性型は極めて希で、国内では2種で報告されるのみである (Akimoto 1999, Ishida & Hiura 1998)。しかし,小笠原諸島固有植物の性表現を再調査するなかで、アカネ科のムニンハナガサノキ (Morinda umbellata L. subsp. boninensis (Ohwi) Yamazaki)もこのような性型を示し、しかもその進化過程には異型花柱性を介した分化が強く示唆されたので、その結果について報告する。

ムニンハナガサノキはこれまで雌雄異株とみなされていたが (Yamazaki 1993)、その花形態を詳細に調べると、両性的な花をつける個体と、雌しべが完全に退化し雄しべだけの花をつける雄性的個体の共存がみられた。両性的ならびに雄性的個体の花粉はいずれもコットンブル-染色液に強く染まり、また両性的個体間で授粉実験(他家授粉)を行ったところ果実や種子の形成が認められた。このことは両性的個体の花粉が十分に機能する花粉である事を強く示唆している。また、両性個体は強い自家不和合性を示し、両性個体の雌しべは雄しべ長より高く突出し、その一方で両性個体の雌しべと雄性個体の雄しべの高さは等しくなり、雄性個体の花粉サイズが両性個体より有意に大きいという結果が得られた。これらの結果は、この植物の性型が異型花柱性的特性を有することを示唆する。さらに、先行研究でMorinda属に異型花柱性を示す種がいくつか知られている(Philip & Mathew 1978)ことなどを考慮すると、この植物は両全性から異型花柱性を介して雄性両全性異株へ進化した可能性が考えられる。

日本生態学会