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一般講演 P3-201

なぜ周期ゼミは素数周期で発生するのか? - ブルード間での先住効果の影響 -

*吉村真弥, 徳永幸彦(筑波大・生命共存)

周期ゼミは北アメリカにのみ生息しているMagicicada属のセミの通称である。周期ゼミは非常に長い間幼虫として地中で生活し、13年に一度の周期で成虫が大発生する種と、17年に一度の周期で成虫が大発生する種が存在している。成虫がある年にのみ同期して大量に発生し、他の年には発生しないという集団の周期性と、その周期の長さが13年もしくは17年という素数年であるという点に関しては、多くの研究者によって研究がなされてきているが、未だ明確な答えは得られていない。

本研究では、集団の同期とその周期の長さが素数年となった進化的な要因として、孵化後地中に潜った際に、1年以上先に孵化し地中で生活する幼虫から受ける先住効果と、同じ年に孵化した個体間での競争が、個体の発育年数に選択圧をかけるのに重要なのではないかという仮説を立てた。その結果として、集団の発生が同期せずに毎年発生し、個体の発育年数が、周期ゼミに次いで長い発育年数を持つOkanagana rimosaと同じ9年だったものが、まず集団として13年周期に同期して発生するものに進化し、その後一部の集団の周期の長さが17年に進化したのではないかと考えた。

この仮説を検証するために、周期の長さが1遺伝子座多対立遺伝子によって決定されると仮定し、個体ベースモデルを用いたシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、先住効果と競争の関係によって集団の発生が完全な同期を示す事はほとんど起こらなかったが、毎年成虫が発生している集団から、発生しない年が現れる事が示せた。また、発育年数の長さに関しても、13年と17年に進化する可能性が存在する事が示せた。今回はこの結果をもとに、仮説の重要性について議論を行っていく。

日本生態学会