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一般講演 P3-215

春採湖における水草の衰退とウチダザリガニ

*神田房行,蛭田眞一(北海道教育大・釧路・生物)

春採湖は釧路市の中心部に近い所にある面積36.1haの汽水湖で、ヒブナの生息する湖として国の天然記念物に指定されている。ここでは20年前の1986年の調査ではイトクズモ、マツモ、ヒロハノエビモ、ヒシ、エゾノミズタデ、リュウノヒゲモの6種の沈水性、浮葉性の水草が見られた。ところが、2002年の調査でイトクズモが採集されなくなり、2003年の調査ではヒロハノエビモが、2005年にはヒシが見られなくなり、2006年の調査ではマツモも殆ど見られなくなった。2006年現在ではリュウノヒゲモとエゾノミズタデが主に生育するだけとなってしまった。

この原因として考えられるのは第一に水質であるが、春採湖の水質は1991年には16mg/l と全国ワースト1になったが、1994年から現在までCODで7〜8mg/l で安定しており、特に最近水質が悪いわけではない。

このような最近の水草の多様性の低下、量的な減少の原因と考えられるのがウチダザリガニの湖内の増加である。ウチダザリガニは春採湖には元々生息していなかったが、2005年に272匹捕獲され、2006年には1447匹が捕獲された。2005年に春採湖の中に隔離水域をつくって実験した結果、リュウノヒゲモとマツモだけを入れた場合では2種とも大幅に増加したが、同時にウチダザリガニを入れた水域では2ヶ月後には水草が全く見られなくなった。また、水草は根元からずたずたに切られていることも分かった。

これらのことから春採湖での水草の急激な減少はウチダザリガニによるものであることが明らかになった。今後はウチダザリガニの駆除が急務となろう。

日本生態学会