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一般講演 P3-246

多摩丘陵における野性哺乳類の種組成および存在量を利用した緑地における生態的機能の評価

園田陽一(明治大・農),倉本宣(明治大・農)

本研究では,野生哺乳類の種組成とアバンダンスと森林の孤立性や森林周辺の土地利用といったランドスケープ構造との関連性から種組成のパターンの決定要因を明らかにすることを目的とした。調査対象地は,多摩丘陵の北西部から北東部までを調査範囲とし,森林の連続性の程度により山地林,連続林,孤立林に分類し,それぞれ3箇所ずつ選定した。調査方法は,赤外線センサーカメラをそれぞれの調査対象地に4〜6台設置した。調査時期は,葉が完全に展葉する5月から落葉する10月までの期間に撮影されたものを相対出現頻度の解析対象とした。フィルムは,感度ISO400,フォーマット35mm36枚撮りのものを用い,およそ1ヶ月置きに回収を行った。撮影の際に,撮影日,撮影時間を記録するようにカメラの設定を行った。解析は,O’Brien et al.(2003)に従い,各哺乳類種の撮影時間帯が30分以上のものを「独立撮影イベント」とし,種ごとに撮影された個体数を集計した。また,カメラ日あたりの頻度を撮影頻度指標(RAI)とし,これを野生哺乳類の相対存在量とした。各調査対象地の種の出現の有無を変数としてクラスター分析し,各調査対象地の種の出現パターンを解析した。また,種のクラスターごとの平均RAIを求めた。結果として,イノシシ,テン,リスといった山地林のみで撮影された種(山地性種),キツネ,アナグマ,ノウサギ,イタチといった山地林,連続林で撮影された種(里山性種),ハクビシン,タヌキ,アカネズミといった山地林,連続林,孤立林のいずれにおいても撮影された種(広域性種)の3グループが抽出された。また,広域性種のRAIは,他のグループと比較して,孤立林ほど高いことが明らかとなった。

日本生態学会