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公募シンポジウム講演 S01-2

超大規模スケールでの細菌の現存量と生産速度の空間分布:南極海からアラスカ沖まで

*横川太一,楊燕輝,永田俊, 茂手木千晶 (京大生態研セ)

海洋生態系において細菌は一次生産を担う植物プランクトンとほぼ同等の生物量を示し、一次生産の50%に相当する有機物を消費しています。このことから細菌は海洋の物質循環おいて非常に重要な生物群であることが知られています。特に、有光層生態系では「一次生産(植物プランクトンによって有機物が生産される過程)」と「細菌生産(細菌が有機物を取り込む過程)」の量的バランスが物質循環経路の構造と規模の決定に大きく関わっていることが明らかとなってきました。一方、一次生産の行われない有光層以深(>200m)では、細菌生産は表層からの有機物供給に依存していると考えられます。しかし、有光層以深での細菌の生物量、生産量および基質環境の時空間分布に関する知見が非常に少ないため、細菌の動態や細菌への有機物供給経路についてはほとんど分かっていません。そこで私達は有光層以深における細菌の生物量および生産量の空間分布とその決定機構を明らかにすることを目的に、中部北太平洋の南北断面観測において、世界で初めて細菌現存量および生産速度(一日あたりの炭素取り込み速度)の超広域・全深度観測(南緯68度-北緯53度、0m-5900m)を行いました。

観測の結果、有光層以深では細菌現存量、生産速度は水平・鉛直方向にダイナミックに変動していることが明らかになりました。また、その分布パターンは有光層以深における細菌の基質環境が不均一であり、基質の供給過程も深度及び緯度によって異なっていることを示唆していました。講演では、不均一な基質環境が形成される仕組みと、基質環境に対応して変動する細菌生物量、生産量の空間分布について議論したいと思います。

日本生態学会