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公募シンポジウム講演 S02-2

花粉一粒のDNA分析方法

陶山佳久(東北大院・農)

花粉一粒ずつを対象としたDNA分析技術は、送粉生態学に革命的な進展をもたらすと考えられるだけでなく、塩基配列分析や連鎖解析等を利用する遺伝学的研究分野におけるユニークな分析手法としてなど、広い分野での様々な応用が期待される。本講演では、花粉粒DNA分析技術を世界に先駆けて広く国内の研究者に普及させることを目的とし、特に技術的に留意すべき点などを紹介しながらこの手法の概要を解説する。

本手法の基礎は、演者らによってすでに10年ほど前に開発されたものであり(Suyama et al., Genes & Genetic Systems 71: 145-149, 1996)、その後の技術開発により、現在では核DNAの複数遺伝子座を対象とした大量サンプルの短時間解析が実用化されるに至っている。本手法の要は、以下の4点に集約することができる。すなわち、1)花粉一粒ずつの分離・移動等のための正確な微小試料操作技術、2)微量DNAを無駄にしないための効率的DNA抽出方法、3)低コピー数テンプレートからの効率的増幅のための最適化されたPCR、4)目的試料以外からのコンタミネーションを完全に排除するための清浄な分析環境である。また、花粉親解析などのように複数ゲノム領域の同時解析が必要な場合には、以上に加えてマルチプレックスPCR技術が鍵となる。

これまで演者らは、マツ科・ブナ科・モクレン科・フタバガキ科・アブラナ科・ツツジ科などの各種で本手法の適用を試みたが、多少の扱いやすさの違いはあれ、すべての種において分析が可能であった。また本手法は、本質的には基礎的技術の組み合わせで構成されている単純なものである。したがって、特にPCRの最適化とコンタミネーション対策に留意すれば、多くの研究者にとって即座に利用可能な有用なツールとして機能すると考えられ、今後の普及が期待される。

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