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公募シンポジウム講演 S12-3

動的全球植生モデル(SEIB-DGVM) と生態データ

佐藤永(海洋研究開発機構)

陸域生態系の構造や機能は気候環境によって強く規定されるが、陸域生態系の構造や機能もまた、蒸発散・炭素循環・アルベドの変化などを通じて、気候環境にフィードバック的な影響を与える。このような地球システムの一部としての陸域生態系機能は、地球環境問題の顕在化に伴い、その定量的解明がますます強く望まれている。

そこで、植生の構造や機能を全球スケールで予測することを目的として、我々は動的全球植生モデルSEIBを開発した(Sato et al. 2007)。従来の同種のモデルでは、植生はいわゆるビッグリーフなどで表現されることが多いが、SEIBにおいては、植生を個体ベースのギャップ動態モデルで表現している。このようなモデルの構造は、既存の植物個体群動態の知見やデータとの親和性が高く、パラメーターの推定やモデルの検証が容易かつ直感的、という特長を持つ。すなわち、SEIBは、ローカルな森林動態研究とグローバルな物質循環研究とを連結する手段を提供する。

本講演では、そのような可能性の一例を示すために、SEIBを熱帯雨林向けにローカライズさせた研究成果を発表する。このローカライズは、SEIBの植生動態コンポネントを、熱帯多雨林のGAP動態モデルFORMINDで置き換えることで実現されている。この変更は、熱帯多雨林の構成樹木のみに適用させており、SEIBの全球モデルとしての枠組みは変わらない。FORMINDは現在の気候条件における森林動態のみを出力するが、SEIBとの結合により、気候条件を入力しながら、森林動態に加えて炭素・水フラックスといった物質循環をも出力する森林シミュレーターとなる。これにより、例えば、将来の気候条件における熱帯雨林の植生動態や物質循環を予測する上で、最重要な生理・生態プロセスを推定するなどといった利用が可能となる。

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