| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-028

西表島仲間川のマングローブ林の森林更新:ヤエヤマヒルギとオヒルギ稚樹の生育特性の比較

*浦田悦子, 藤原一繪(横浜国大・院・環境情報)

西表島は亜熱帯に位置し,マングローブ種の分布北限付近に位置する.4種のマングローブ種が海から内陸に向かって帯状分布を形成しており,特にヤエヤマヒルギとオヒルギは広く分布している.このヤエヤマヒルギとオヒルギを対象に,日本のように狭い潮間帯の干潟に帯状分布を形成する場合,マングローブ種の塩類環境への対策と,生長のための光合成機構の充実という二つの窒素資源利用のバランスが,実生,稚樹,成木といった生育段階にどのような影響を与え、森林更新へ反映されるのかを考察する.

オヒルギが林冠を構成しているオヒルギ帯と,オヒルギとヤエヤマヒルギで構成される混交林において,海側から陸側に向けてベルトを引き,それぞれの種の各生育段階として成木,稚樹(樹高2m以下),実生(樹高50cm以下)の定着環境と,生育状態を調べた.定着環境については,地盤高,土壌に含まれる可給態窒素の量,光条件を計測した.また,個体の生育状態については,成木の場合は樹高,DBH,枯損度,林冠葉の葉緑素濃度と窒素濃度を計測し,窒素再吸収率を(生葉中の窒素量―落葉寸前の葉中の窒素量)/生葉中の窒素量×100 として算出した.稚樹と実生についても同様に,樹高,成熟葉の葉緑素濃度と窒素濃度を計測し,窒素再吸収率を算出した.

結果,オヒルギ帯の場合,どちらの種の稚樹も光条件の良いところに集中して出現する傾向を示した.しかし混交林の場合,光に対して集中傾向を見せたのはヤエヤマヒルギの稚樹のみであった.土壌中の窒素の影響は,混交林におけるヤエヤマヒルギの稚樹のみ葉の窒素含有量と負の相関が有意に見られた.生育段階を進める上で重要になる,環境要因から実生や稚樹が受ける影響とそれに対する反応は,定着する林分によって変化するものと考えられる.


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