| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-134

指標植物をもちいた関東地方の里地里山評価

*菅原のえみ,小池文人(横浜国大院・環境情報)

里地里山とは,奥山と都市の中間に位置し,集落とそれを取り巻く二次林,それらと混在する農地,ため池,草原などで構成される地域概念である.生物多様性の高い里地里山を保全していくためにはどこが保全上重要なのかをしめす評価地図が必要になるが,大きな空間スケールの評価では空中写真や地形などのデータが使われることが多く,実際の生物的自然に対する直接的な評価になっていない.他方で,いくつかの指標生物の分布を総合して評価地図を作るアプローチは労力の制限もあるため,ひとつの市など小さな空間スケールで行われている.本研究では,広域的なスケールで指標植物を用いて里地里山を評価する調査手法を開発し,関東地方全体の評価地図を作成することを目的とした.

2次メッシュを4変数(標高のSD,宅地,森林,耕作地の割合)によって景観グループに分け,特定の景観に偏らないようにそれぞれから調査地を設定した.野外調査では大きな空間スケールを効率的に調査するため,10kmのラインを設定しラインに近い歩行可能な道を踏査して指標植物の在不在を1kmごとに記録した.指標植物は草地種としてススキクラスの区分種から13種.水田種としてウリカワ・コナギ群集の区分種から9種を選定した.

草地種の出現は北関東で多く,水田種は東関東で多かった.総合的な里地里山環境としては関東地方の北から東側が良好であり,東京近郊は良好でなかった.環境要因(地被PCA,気温、窒素降下量)との関係の予備的な解析では,草地種は寒冷な山地で豊かだが,水田種は低地の広い水田地域で豊かだった.里地里山は寒冷高地の草地要素と低湿地の水田要素がモザイクになっていて,両方が同時に極大となる地域は無いようだ.今後は気候的背景や文化歴史的,フロラ的背景が異なる北海道や九州南部を含めた全国的な調査を行う予定である.


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