| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-477

テトラヒメナと大腸菌からなる実験室内共生系の構築

*森光太郎(阪大院生命機能), 冨田憲司,細田一史(阪大院情報科学),四方哲也(阪大院情報科学・生命機能・ERATO)

自然界には細胞内共生の例とされる現象が数多く存在する。このことは、進化の過程において新形質の獲得機構として細胞内共生が重大な役割を演じてきたことを示唆している。元々独立に生きていた細胞が融合して細胞内共生が成立する機構は、食作用や寄生とされているが、それらを通じて細胞内共生がどのような環境で、どのように生理学、形態学、生態学的な困難を乗り越え成立するのか、またそれはどのくらい難しいことなのかは謎である。これに答える一つのアプローチとして、本研究では、元々共生関係にない繊毛虫テトラヒメナ(捕食者)と大腸菌(被食者)を用い、より大腸菌を保持したテトラヒメナを人為選択するという実験進化によって、実験条件下で共生の初期段階を作り出し、相互作用の解析をしようと試みている。具体的には、テトラヒメナの必須アミノ酸と大腸菌(アミノ酸要求性株)の要求アミノ酸を1つずつ抜いた培地で共培養し、捕食と栄養の漏れ出しによって互いに栄養依存して個体群の維持ができる必須相利共生系を構築した。更に、セルソーターを使って、特定の数の大腸菌を取り込んだテトラヒメナを分取選択しながら、10ヶ月間植え継ぎ培養したところ、徐々にテトラヒメナの増殖率が増加したのと同時に、テトラヒメナ集団の多くの細胞が食胞内に大腸菌を維持するようになったことが、顕微鏡やフローサイトメトリーの観察から明らかになった。テトラヒメナ単独では1週間程度で死に絶える環境で安定に両者が増殖することは、テトラヒメナと大腸菌の必須相利共生関係が強化されていることを示唆する。このような変化についてテトラヒメナの個体群動態の数理モデルを用いた解析も行った。


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