| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-489

遺伝子制御ネットワークモデルを用いた表現型可塑性の進化モデル

*津田真樹, 河田雅圭 (東北大・生命科学)

環境が時間的・空間的に異質である時にそれぞれの環境に適応した表現型を作り出す表現型可塑性の進化が促進される。しかし、ほとんどの表現型可塑性の進化モデルでは具体的な遺伝的メカニズムを考慮していないため。可塑性の遺伝的メカニズムの進化についてはよくわかっていない。捕食者・栄養など環境シグナルに応答して細胞内の遺伝子発現状態を変化させることは表現型可塑性の主要な遺伝的メカニズムのひとつである。近年特に単細胞生物での研究により、そのような環境シグナルへに対する遺伝子発現変化はピラミッド状の階層的な転写制御ネットワークにより制御されていることが明らかとなってきている。例えば、酵母ではフィードバック構造や重複遺伝子が比較的多く複雑な構造をしている、一方で大腸菌ではそれらが少なく単純な構造をしている。さらにより近縁種間でのネットワーク構造解析も進んでいる。しかし、それらの系統間での遺伝子制御ネットワークの構造の違いがどのような生態・進化的要因により生じたのか明らかではない。そこで本研究では、表現型を司る遺伝子の発現量が遺伝子制御ネットワークにより決定される個体ベースモデルに環境シグナルを受け取る受容体を組込むことで、環境シグナルにより表現型遺伝子の発現量が可塑的に変化することが可能な遺伝子ネットワークモデルを構築する。そして様々な環境シグナル強度の変動様式の下で集団を進化させることで、環境シグナル強度の変動による遺伝子発現量の可塑的応答性が表現型を制御するネットワーク構造の進化にどのように影響するか解析する。


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