| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-499

ニホンリスにおける遺伝的多様性の地域差

*田村典子(森林総研), 林文男(首都大)

ニホンリス(Sciurus lis)は、本州、四国、九州、淡路島に分布する日本固有種であるが、中国地方以西では生息範囲が急速に縮小している。九州や淡路島では近年の生息記録がまったく無い。本研究では、ニホンリスの系統地理学的解析と、集団間の遺伝的多様性の比較を行った。日本各地から得た捕獲個体あるいは交通事故死個体の耳介の皮膚組織を用い、ミトコンドリアDNAのD-loop領域約400塩基の配列を求めた。16都県を含む34地点から合計190個体を解析した結果、四国で採集された個体は、本州各地の個体と異なるクラスターを形成し、両者は遺伝的に異質な集団であることが示唆された。一方、本州内では明瞭な地理的変異は認められず、集団間の移動分散がある程度大きいと考えられた。岩手県盛岡、東京都高尾、山梨県富士河口湖、静岡県伊豆半島、長野県八ヶ岳、鳥取県倉吉の6個体群について、ハプロタイプ多様度を比較すると、岩手県盛岡および長野県八ヶ岳ではとくに遺伝的多様度が高く、鳥取県倉吉ではもっとも多様度が低くなっていた。鳥取県と岡山県を合わせても、わずか2つのハプロタイプしか見られず、中国地方西部のニホンリスの遺伝的多様性が著しく失われていることが明らかとなった。


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