| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-581

連結打空産卵を行なうノシメトンボの翼面荷重と卵生産

*須田大祐,岩崎洋樹,渡辺守(筑波大・院・生命環境)

ノシメトンボは羽化すると直ちに里山林内のギャップへ移動し、生涯を通じてその場に留まっている。水田への飛来は産卵時だけであり、雌雄が連結し、水の有無に関わらず稲の上空を飛びまわって連結打空産卵を行ない、体内に保有していた成熟卵を全て産下してしまう。これまでの標識再捕獲調査等により、水田への飛来間隔はおよそ1週間おきであることが明らかになっている。本研究では、繁殖期における日あたり摂食量と卵生産との関係を解析するとともに、雌雄の飛翔能力の指標として翼面荷重を調べた。早朝の林内で、摂食活動を開始する直前の雌雄を捕獲し、水だけを与えて排出した糞を計量したところ、前日までに摂食した餌由来の不消化物の大部分は24時間以内に排出されることがわかった。そこで、24時間水だけで飼育した後、餌としてヒツジキンバエを与え、給餌後24時間以内に排出した糞量と摂食量の関係式をつくった。この式に野外で捕獲した雌の排出した糞量を代入し、日あたり摂食量を求めると、約17.9mg(ヒツジキンバエ約2.8頭分)となった。捕獲した雌を強制産卵させた後、ヒツジキンバエを毎日3頭給餌してから、適宜解剖し、生産した成熟卵を数えると、給餌日数とともに成熟卵数は増加し、日あたり約78.5個の成熟卵を生産することがわかった。雌は約400個の成熟卵をもって水田を訪れるため、産卵後、充分な量の餌を摂食すれば、約5日でこの成熟卵数まで回復できることになる。雄の翼面荷重は雌よりも有意に小さく、雄は雌よりも機敏な飛翔を行なえることが示唆された。このような飛翔能力は、雌とタンデムになることで、水田に飛来した際、鳥などの捕食者を回避したり、飛翔中に生じる種内干渉を避けたりする場合に適していると考えられた。これらの結果から、本種の繁殖戦略について考察した。


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