| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-592

ヤノナミガタチビタマムシの生態とそれを利用した防除

大澤正嗣(山梨森研)

ヤノナミガタチビタマムシ (Trachys yamoi Y.Kurosawa) は、タマムシ科チビタマムシ属、体長3 〜 4 mm の害虫で、ケヤキの葉を食害する。山梨県峡東地域では、本害虫の被害が近年認められ、特に広いケヤキ巨木林を有する森林公園“稲山の森”では、夏にケヤキの葉がほとんど落葉してしまう激しい被害が毎年繰り返されている。ケヤキ大木の樹冠部で葉を食害するヤノナミガタチビタマムシには、薬剤撒布は適さない(その高さのため薬液がとどかない、また稲山の森は水源地となっている)ことから、その防除方法を、この害虫の生態を利用する方向で検討した。

4月下旬に、成虫が越冬から活動を開始し、軽〜中度の食害と、産卵が認められ、その後、潜葉性の幼虫(絵描き虫)が食害を開始した。この被害は大きく、初夏に食害を受けたケヤキ葉が落葉し、ケヤキは大多数の葉を失った。その落葉中には、ヤノナミガタチビタマムシの終齢幼虫、蛹、成虫が見いだされた。7月中旬から新成虫によるケヤキ葉の食害が始まり、11月まで続いた。10〜11月に樹皮下に成虫が集まり、越冬を開始した。しかし、翌春に越冬を無事に終了し活動を開始した成虫は少数であった。これらのことから、越冬期の防除と被害葉落葉期(初夏)の防除が考えられたが、被害葉落葉の時期と幼虫の状態や越冬場所等を更に検討したところ、被害葉落葉期の方が防除には有効と思われた。


日本生態学会