| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-353

国指定天然記念物西湖コウモリ穴における翼手類の生息状況

*中村光一朗(明大・農),中川雄三(山梨県希少動植物保護員),倉本宣(明大・農)

多くの洞窟が点在する富士山周辺において、コウモリ類の繁殖が確認されている洞窟は一つに限られる。しかし、山梨県には繁殖が行われている可能性がある洞窟が複数あり、その一つに観光洞として利用されている西湖コウモリ穴がある。この洞窟では、2006年からコウモリ調査が行われてきたが、調査規模が年に数回程度であり、生態学的データを得るには充分な研究が行われていない。そこで、今まで継続的に行われてはいない繁殖期を含む時期のコウモリの種と個体数を把握するために2008年4月から月に1度調査を行った。調査の結果、モモジロコウモリ、キクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ、ウサギコウモリ、の4種がこの洞窟をねぐらとして利用していたことを確認した。6月16日、7月14日の調査ではモモジロコウモリの集団が確認され、この洞窟がモモジロコウモリにとっての繁殖洞である可能性が高いことが明らかになった。夜に洞窟を利用しているコウモリ調査の結果では、この期間1度も確認されていないコキクガシラコウモリによる洞窟の利用が確認された。中でも4月16日の調査では、合計で約340頭ものコキクガシラコウモリの集団出巣がみられた。そこで、洞窟内で撮影を行ったところ、人の進入できない小さな穴からコウモリが出てきていることを確認した。このことから、コキクガシラコウモリは、この洞窟内でも人の進入できない小さな穴の奥に大規模なねぐら集団を形成していることが判明した。


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