| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-363

渡良瀬遊水地の繁殖鳥類の密度分布を景観要素から説明できるか?

*永田尚志, 武田知己(国環研・生物)

渡良瀬遊水地は、本州で最大の湿地といわれ3300haの広さがあり、多様なハビタットを含まれる。そのうち1500haがヨシ原であり、毎年の火入れで維持されている。ヨシ原、灌木林、草原、開水面と様々な環境を持つため、217種をこえる鳥類が記録されている。2006-2008年の繁殖期に、ヨシ原に生息している鳥類を固定した91地点から半径250m以内のすべての個体を5分間記録するポイントカウント法で調査した。主要な湿地性鳥類の密度分布をリモートセンシング情報および植生図と重ね合わせて、種数、各種の密度分布を説明するモデルを探索した。各植生の面積に加えて、空中写真から算出した地盤高、植生高、火入れの有無、オギ・ヨシの判別式の値を説明変数とする一般化線形モデル、あるいは一般化線形混合モデルを用いた。

その結果、種多様性は景観要素で決まり、地盤高が低く起伏に富んでいて灌木がある地点で高い傾向が認められた。オオヨシキリ、コヨシキリ、セッカ等のヨシ原が生息に重要な種では、オギ・ヨシを判別した要因を含んだモデルがもっとも高い説明力を持っていた。一方、ウグイス、ホオジロ、ヒバリは植生高と植生分類の変数のみで生息密度を説明できた。また、オオヨシキリ、コヨシキリ、セッカ、ホオジロは前年の分布が生息密度を決める要因にもなっていて、特にオオヨシキリでは火入れによるヨシ原の焼け方が生息密度を決めている可能性が示唆された。一方、ヒバリやウグイスの分布は環境要因によって決まり、火入れの影響はないと考えられた。これらの結果から、湿地性鳥類の集合がどのように決まるかを考察したいと考えている。


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