| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-366

大隅諸島における汽水・淡水産貝類相及びカワニナSemisulcospira libertinaの系統解析

*片野田 裕亮,中島 貴幸,市川 志野(鹿児島大・理工研),浅見 崇比呂(信州大・理),冨山 清升(鹿児島大・理)

大隅諸島は南西諸島北部に位置し、種子島、屋久島、口永良部島と三島(黒島、硫黄島、竹島)から成る島嶼群である。大隅諸島において、陸産貝類についての研究は比較的行われているが、汽水及び淡水産貝類の研究に関してほとんど行われておらず、貝類相に関する詳細な報告すらされていない状況である。

そこで本研究では、大隅諸島及び口之島、薩摩半島南部、大隅半島南部における汽水及び淡水産貝類の詳細な分布調査を行い、各調査地における汽水及び淡水産貝類相を明らかにする事を目的とした。また、全国の河川や水路に棲息し、大隅諸島においても淡水巻貝の代表的存在となっているカワニナSemisulcospira libertinaについてmtDNAのCO1領域の解析を行い、大隅諸島及び鹿児島県本土のカワニナの遺伝的集団構造を検証する事を目的とした。

貝類相の調査では、海産貝類も含め全調査地で20科53種を確認した。汽水及び淡水産貝類については、全調査地で12科22種を確認した。出現種として最も多いのはカワニナであり、硫黄島以外の全ての調査地で確認された。カワニナ以外の出現種では、フネアマガイとイシマキガイが多くの調査地で確認された。鹿児島県本土と奄美大島の汽水及び淡水産貝類相と本研究の調査地の汽水及び淡水産貝類相の比較では、本土及び奄美大島両方の貝類相と重複する種と、本土の貝類相とだけ重複する種が確認されたが、奄美大島の貝類相とだけ重複する種は確認されなかったことから、本研究の調査地の貝類相は本土の貝類相に近いことが示唆される。

カワニナの系統解析では、薩摩半島南部、大隅半島南部、種子島を含む集団と、屋久島、口永良部島、竹島、黒島を含む集団の2つの集団から構成されると推定された。


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