| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-745

ツマグロバッタのオスは他オスに応じて鳴き方を変える

*等々力成史(京大院・農・昆虫生態),福井昌夫(京大院・農・昆虫生理),藤崎憲治(京大院・農・昆虫生態)

オスが音や光を発する様々な種では、集団で独特のリズムパターンを示す現象がみられる。例えば東南アジアに生息するホタルの同調発光現象は400年以上前から知られているものの、いまだにその適応的意義ははっきりしていない。近年このシグナルの時間的相互作用は、集団の協調的機能としてではなく個体間の競争の副産物に過ぎないという観点からの研究がなされ始めている。

直翅目昆虫の一種ツマグロバッタのオスは片方の後脚のけづめを蹴り上げるようにして前翅に当てることで、クリック音を出す。発音動作の一部始終が明瞭に見られるこのバッタはシグナル相互作用の研究材料として適している。本研究では発音のタイミングにオス間でどのような相互作用があるのかを調べるために、ケージ内のオス数を1個体、2個体、3個体と変えた条件でそれぞれ発音の様子を録画・録音し解析した。その結果、オスは単独ではほとんど発音しなかったが、他オスの数が増えるにつれて発音個体の割合は高くなった。これはオス間に発音の相互作用が存在する事を示している。オスが複数いる時には規則的に他オスの発音直後(ピークは約0.7秒後)に鳴く事で、オス同士が交互に鳴き交わす現象がみられた。またオスは発音に際して左右両方の後脚をずらしながら同時に上げたり、一旦上げはじめた後脚を途中で戻したりと、他オスに応じて発音のタイミングを調節する行動が観察された。

これらの結果より、ツマグロバッタの発音に際してはそのタイミングをめぐるオス間の競争が存在する事が示唆された。本講演では、個体識別した個々のオスの挙動に注目しながらこの競争について考察する予定である。


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