| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-763

ホソヒメヒラタアブの”ためらい行動”は捕食者回避に有効か

*横井智之,藤崎憲治(京大院・農・昆虫生態)

訪花昆虫は採餌中の捕食リスクを最小限にするために、捕食者に対して何らかの適応的な行動をとろうとする。ハナアブ類でもハチなどへの形態的な擬態に加えて、行動的な擬態も示す種がいることが知られている。この行動的な擬態は鳥などの捕食者に対しては効果的と考えられるが,花上の捕食者に対してハナアブ類がどのような回避行動を行っているのかについてはこれまで研究がなされてこなかった。今回ホソヒメヒラタアブ Sphaerophoria spp.が花へ着地する前に前後方向にホバリングする“ためらい行動”が、花上の捕食者であるカニグモからの回避に効果的であるかを検証するために野外実験を行った。ヒメジョオンへ訪花したハナバチやハナアブ類の着地行動を観察した結果、ホソヒメヒラタアブだけが訪花に際してためらい行動を示し、この行動は葉上よりも花上に着地する場合に頻繁にみられた。加えて、アズチグモの死骸を花上もしくは花の下部に設置して呈示したところ、花上に設置した場合で特に高い忌避率を示した。さらにためらい行動の回数は、花上にアズチグモを設置した場合には、設置していない場合に比べて有意に減少した.また、同種他個体が直前に訪花した花を採餌している個体に呈示したが、忌避する割合は非常に低かった。以上の結果から、ホソヒメヒラタアブのみせる“ためらい行動”はヒラタアブ亜科に特徴的な行動であり、他個体の採餌により資源の減少した花を避けるためではなく、花上で待ち伏せている捕食者を回避するために有効な行動であることが示唆された。


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