| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-767

ホオズキカメムシの対卵寄生蜂戦略

*中嶋祐二, 藤崎憲治(京大院・農・昆虫生態)

植食性昆虫は捕食寄生者に対して多様な防衛戦略を進化させてきた.ホオズキカメムシには複数の卵寄生蜂が存在することが知られている.Ooencyrtus nezaraeO. acastusは京都において主要種であり,Gryon philippinenseは高知,奄美大島において主要種であるが京都には分布しない.G. philippinenseOoencyrtus属の2種に比べてHandling timeがはるかに短い.一方,ホオズキカメムシは硬い卵殻で覆われた卵を,しばしば食草外に産下するという特異的な産卵習性を持つ.そこで,食草外産卵が卵寄生蜂からの寄生回避に有効であるか,硬い卵殻は卵寄生蜂との共進化の産物であるかの2つの仮説を検証した.

寄生率調査は京都と高知で行った.京都では寄生率は2.4%と低く,食草外の方が食草上に比べて有意に高いという仮説とは逆の結果になった.しかしながら,何らかの捕食者による卵の捕食が観察され,その被食率は食草上で有意に高く,寄生率を加えた卵の死亡率も食草上で有意に高かった.一方,高知において寄生率は34.4%と京都に比べて高かったものの,食草外産卵が寄生回避に有効であることは実証されなかった.したがって,卵捕食者の影響を考慮すると同時に,G. philippinenseがさらに重要であると思われる南西諸島個体群においてより詳しい調査が必要である.

卵殻の硬さについては,京都,高知,奄美個体群由来のホオズキカメムシ卵に対するG. philippinenseの産卵行動を観察した.京都卵に対するHandling timeが高知,奄美卵に対するそれに比べて有意に短かった.これはG. philippinenseとの相互作用がホオズキカメムシに硬い卵殻を形成させる対抗適応を促したと考えられた.


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