| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-770

潜葉虫のマインパターンに対する葉の栄養学的・解剖学的影響

*綾部慈子(名大・森林保護)

潜葉虫は植物の内部組織のみを摂食し、線状から斑状のものまで種特異的な目立つ摂食痕(マイン)を葉に残す。線状マインは交差や枝分かれ構造など2次元に広がりをもつパターンを示し、このようなパターンは、植物の防御物質・構造(葉脈)を回避的に、また、1枚の葉平面上で高栄養部位を選択的に摂食した結果の産物であるという仮説がある(The selective feeding hypothesis)。本発表では、複雑な葉脈配列をもつ双子葉のノコンギクとそのハモグリバエ科リーフマイナーOphiomyia maura Meigenを用いて仮説を検証し、潜葉習性に関する知見を深めることを目的とする。

ノコンギクの葉は鋸歯のある長蛇円形、葉脈は羽状脈で、主脈とそこから複数の1次側脈が分岐、それ以外を細脈が網目状に走っている。O. mauraは辺縁部を選択的に摂食し葉の形と同化したマインパターンを示すため、健全葉を辺縁と葉身に分け栄養価を比較することができる。本研究では、(1) 葉の複数箇所において横断切片を作成、葉脈に着目して葉の解剖構造を明らかにし、葉脈配列がマインパターンの規定要因になっているのか、(2)辺縁と葉身とで窒素含有率を比較し、辺縁部摂食が栄養価の偏りによって決まっているのか調査した。

結果、O. mauraの葉平面内の摂食場所は、主脈と1次側脈の配列に影響を受けていたが、細脈には影響を受けないことがわかった。また、辺縁部の方が、葉身部に比べて窒素含有率が有意に高かった。O. mauraが辺縁を摂食し葉の形と同化したマインパターンを示すのは、辺縁部が葉脈回避に適していることに加え、栄養価が高いことが原因と考えられ、the selective feeding hypothesisが支持された。


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