| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T23-2

実験デザインを反映した分散分析モデルとその意味

*玉井玲子(琉球大・理工),酒井一彦(琉球大・熱生研)

統計解析の勉強をはじめたばかりの学生にとって、分散分析モデルの数学的理解はハードルが高い。本講演では、分散分析に馴染みのない学生にとって入門となるよう、基本的な分散分析の考え方について概説する。

まず「三種類以上の水準間で平均値を比較するための検定法」としてしばしば認識される一元配置分散分析を例に挙げ、F検定の数学的原理(分散比の計算法)と数学的仮定(正規性・等分散性・独立性)について簡単に説明する。

次に、二種類以上の要因を置いた各種のモデルを実験計画法の観点から概説し、偽反復の発生を防ぐには正しいモデルを仮定することが重要であることを説明する。野外実験によって得られたデータに潜在する空間的自己相関への対処法としてブロッキングの必要性を述べ、ブロックおよびその他の要因が分散分析モデルにおいてどのように扱われるかを示す。また、複数の個体を同一の容器で飼育することで得られたデータを階層分散分析(nested ANOVA)で解析する際に生じうる偽反復について言及する。

最後に、講演者自身が沖縄本島で行っている、サンゴと海藻の空間競争に関する野外実験(ケージング実験)を紹介する。サンゴのように移動しない海洋性ベントスの調査研究を行う際には、空間的自己相関を考慮した実験(調査)デザインが不可欠である。実験計画に当たり講演者が直面した問題と、ブロッキングや階層的サンプリングによるその対処について概説する。


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