| 要旨トップ | ESJ56 企画集会 一覧 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T23 -- 3月21日12:00-14:00 A会場

野外データに潜む自己相関と偽反復 −他人事では済まされない統計解析の罠−

企画者: 玉井玲子(琉球大・理工), 入江貴博(琉球大・熱生研), 角谷拓(東大・農)

地表面上で定量化されたデータは、しばしば観測地点の位置に依存して互いに独立ではない(例:互いに位置が近いほど観測値が似る)。従って、野外でデータを採るすべての研究者は、このような観測値の空間的自己相関(spatial autocorrelation)との直面を強いられると言える。データ間の自己相関に無自覚で、独立性の仮定を無視した統計解析(推定・検定・モデル選択)を回避し、研究の信頼性を上げるためには、正しい知識に基づく研究計画の立案が必須である。本企画集会では、これから統計解析の勉強を始める学生にも内容の理解が可能となるように、まず統計解析における偽反復(pseudoreplication)の概念を数式を一切提示せずに説明する(麻生)。次に、野外実験おけるblockingを例に分散分析モデルでの要因の意味をデータの独立性の点から説明する(玉井)。入江は、データ間の相関を多次元分布によってモデル化することで有効サンプル数を推定し、自由度を調整した検定を行う方法について紹介する。後半ではより応用的な実例として、空間パターンを生み出す過程を積極的にモデル化するアプローチについての講演をお願いする。山北は、空中写真から定量化したアマモの時間変動に見られる空間的な同調性を統計モデルを用いて記述した事例について話をする。最後に、外来種の分布拡大を例にベイズ統計学に基づく統計的・数値計算的な分析手法に関する話題提供する(角谷; see http://tombo.sub.jp/bayes.html)。仲岡雅裕氏(北大)をコメンテータに交えて、内容に関する全体討論を予定している。

[T23-1] Pseudoreplicationとは? 麻生一枝(成蹊大学・理工)

[T23-2] 実験デザインを反映した分散分析モデルとその意味 *玉井玲子(琉球大・理工),酒井一彦(琉球大・熱生研)

[T23-3] 有効標本数と自由度調整で対処する空間的自己相関 入江貴博(琉球大・熱生研)

[T23-4] 空間自己相関を考慮に入れたアマモ類の広域動態の解析 山北剛久(千葉大・理)

[T23-5] 移動分散を考慮した空間データの分析:外来種の分布拡大を事例に 角谷拓(東大・農)


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