| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-123

突発的な降雨に対する小笠原移入樹種の水利用特性

*矢崎 健一,石田 厚

【目的】アカギ(Bischofia javanica)は、固有の島嶼生態系をもつ小笠原父島への移入樹種であり、その拡大阻止のための対策が重要な課題となっている。小笠原は比較的乾燥性の気候であり、またしばしば大きな台風が襲来することから、変動する水環境に対してどのように水を利用できるかが種の生育に重要な要因であると考えられる。本研究では、アカギなどの移入種と小笠原の在来樹種がどのように変動する水環境に対して反応しているかを評価する事で移入プロセスを明らかにすることを目的とした。

【方法】森林総研小笠原試験地内に生育し、林冠に到達しているアカギとヒメツバキ(Schima mertensiana)をそれぞれ2個体、計4個体を供試木とした。樹高はアカギで7.5mと12m、ヒメツバキで7.9mと9.5mであった。樹幹流の測定にはグラニエセンサーを用い、樹幹上下方向での水の移動を評価するため、各個体の胸高部位(樹幹下部)および頂端より2m程度の部位(樹幹上部)にそれぞれセンサーを取り付けた。測定は2007年9月より2008年8月まで行った。

【結果と考察】樹幹下部では、測定期間中の平均樹幹流量および樹幹流速度はアカギよりもヒメツバキの方が大きい傾向にあった。このことから、同様の水環境下でヒメツバキはより多くの水を利用しているといえる。また、二種とも樹幹上部の方が下部よりも樹幹流速度が小さい傾向にあったが、種間の明確な傾向はみられなかった。しかしながら、樹幹上部と樹幹下部の樹幹流速および流量の差はヒメツバキでより大きかった。したがってヒメツバキはアカギにくらべてより多くの水を樹幹の通導組織内に貯留している可能性がある。降雨前後における樹幹流速度の変化に明確な種間差は認められなかったことから、アカギの侵入するような比較的土壌の厚い立地においては、突発的な降雨の利用特性の種間差は小さいと考えられる。


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