| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-125

葉特性からみた湿原群集構造

*神山千穂, 片渕正紀, 佐々木雄大, 嶋崎仁哉, 中静透, 彦坂幸毅(東北大学・院・生命科学)

種の分布および共存メカニズムの解明は、生態学の大きなテーマの一つである。ある植物群集をみたとき、共存する各植物種の形態的、生理的特性は種間で異なる。一方で、様々な群集をみたときには、環境要因と種特性間に強い関連性があることが知られており、環境傾度に沿って、ある特性における群集構成種の平均的な値が変化すること(例えば、土壌含水量の多い環境に成立する群集ほど、構成種の平均的な葉の厚さが薄くなること)が示されている。この群集を代表する平均値(群集平均値)の環境傾度に伴う変化には、群集間における特性の種内変異と、種組成そのものの入れ替わりによる特性の変化が寄与していると考えられている。本研究は、環境傾度として標高に着目し、異なる標高に成立する湿原群集間の比較を行い、標高と種特性および種組成の関係を明らかにすることを目的とした。調査は、青森県八甲田山系において、標高574mから1285mに成立する27湿原を対象とし、2009年夏に行った。各湿原において、構成種の被度、LMA(葉面積あたりの葉重)、最大葉高、個葉のサイズの測定を行った。群集平均値の計算では、各種の被度による重み付けを行った。出現種数は、最も少ない湿原で13種、最も多い湿原で43種であった。高標高に成立する湿原ほど、最大葉高と個葉サイズの群集平均値が低下し、また、LMAの群集平均値は標高によって変化しなかった。最大葉高と個葉サイズの群集平均値にみられた標高間の傾向には、種組成の変化よりもむしろ、標高間での種内変異が寄与していた。このことは、異なる標高に広く分布する被度の高い優占種の種内変異が、群集構造に影響していることを示している。


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