| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-139

可視-近赤外魚眼カメラを用いた落葉広葉樹林のフェノロジー観察

*中路達郎(北大・北方生物圏FSC),小熊宏之(国環研),田柳史織,日浦 勉(北大・北方生物圏FSC)

森林生態系のフェノロジーを分光情報から検出する方法を確立するための基礎研究として、小型の可視・近赤外カメラによる落葉広葉樹林のモニタリングを行った。

北海道大学苫小牧研究林の落葉広葉樹林(最大樹高約20m)において、地上35m林冠クレーン上部から魚眼レンズ付きの分光カメラを用いて樹冠を毎日撮影し、一方で定期的に6樹種(アサダ、イタヤカエデ、オオバボダイジュ、シウリザクラ、ミズナラ、ヤマモミジ)の樹冠頂上の葉の面積成長と色素濃度の測定を行った。使用した分光カメラは、緑(500〜600nm)、赤(600〜800nm)、近赤外(700〜1000nm)に感度をもつ。本研究では、魚眼レンズの側面にミラーを設置しカメラハウジングの上下両方向に開口部を作成することで、入射光と反射光を画像として同時に記録した。反射/入射の比から樹冠のピクセルごとの分光反射率を計算し、それをもとに樹冠の植生指標(NDVI:Normalized Difference Vegetation Indexなど)画像を作成した。反射率や指標値の時間変動パターンと葉の成長開始時期、紅(黄)葉や落葉時期の対応関係について解析を行ったところ、赤と近赤外の反射率から算出したNDVIは、樹種間の展葉や落葉時期の違いをおおまかに反映していたが、一部の樹種では、落葉の開始時期とNDVIの増減時期に差異も認められた。このような分光反射情報と葉の構造・色素成分との関係を通して、可視・近赤外カメラのメリットやデメリット、落葉広葉樹のフェノロジーモニタリングにおける近接センシングの有効性について検討する。


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