| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-151

常緑広葉樹稚樹の季節・老化に伴ったクロロフィル含量・窒素含量の変化

*水崎大二郎,本條毅,梅木清(千葉大園芸)

葉の窒素含量、クロロフィル含量の季節的・長期変動の変化は、個体の成長動態などと連動したフェノロジカルな物質の動きとして見る観点と、また変化する環境に対する順応として見る観点がある。Chapin(1983)は葉の窒素含量が成長期(6月頃)に減少していることを見出し、成長器官へ転流が起きている可能性があることを報告している。しかし、季節的に変化する環境に順応している可能性もある。長期的には、Franklinら(2002)やFiled(1983)は成長とともに被陰される古い葉は光合成関連物質を多く持つ必要がなく、窒素含量が低下すると報告した。しかし、Ethierら(2006)らは葉齢に伴っルビスコ量の低下は見られないという報告をした。本研究では常緑広葉樹の葉の窒素含量、クロロフィル含量の変動を個体ごとに調べ、変動の要因を議論した。

材料は千葉大学園芸学部の林床のヤブニッケイ、シロダモ、タブノキ、スダジイ、ヒサカキ。すべて3m以内の稚樹で主軸についているほぼすべての葉で、クロロフィル含量、窒素含量を光学的機器を用いて2年間、月に1度測定した。同時に葉の展葉、落葉と主軸の伸長量を測定した。光学的機器はSPAD-502、アグリエキスパートを季節の調整をすべきか検討した上で推定モデルを作り用いた。別の個体で用いてクロロフィルa/b比を1年間、隔月で測定した。

結果、クロロフィル、窒素、a/b比すべてで季節変動をしていることが確認された。またクロロフィル、窒素の季節変動、長期変動には個体差、種差があることがわかった。特にタブノキは古い葉がの周りの光が暗くなっていると予想されるにもかかわらず、クロロフィル、窒素ともに増加している傾向が観察された。種特性や個体の生育状況によっては、個体の光合成速度を最適化するようにクロロフィル、窒素が動くという現象は起きないことがわかった。


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