| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-159

タネツケバナ属における根の形態形成と環境適応

*坂根雅人(京都大・SER),深城英弘(神戸大・理),工藤洋(京都大・SER)

植物の根は、水分や栄養塩類の取り込みを行う重要な器官であり、生育環境によって多様な形態を持つ。モデル植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の研究から、根の形態形成の機構が解明されつつある。しかし、皮層の多層化や通気組織の形成など、シロイヌナズナが示さない根の形質について研究することは難しい。そこで本研究では、シロイヌナズナと近縁なアブラナ科の植物であるタネツケバナ属(Cardamine)を研究材料として用いることで、これらの機構の解明を試みた。

まず初めに、Cardamine各種の植物においてテクノビット樹脂切片法により、根の横断面の観察を行った。Cardamine hirsuta,C. parviflora,C. amara,C. lyrata,C. flexuosa,C. scutataの計6種において観察を行ったところ、全ての種において皮層の多層化が生じていることが分かった。これは、皮層が1層であるシロイヌナズナとは対照的である。また、湿地性の植物であるC. amaraでは、通気組織と思われる細胞間隙が形成されていることが分かった。次に、皮層の多層化の様子を調べるため、C. hirsutaにおいて、共焦点顕微鏡による根の縦断面の観察を行った。C. hirsutaでは、皮層の多層化が内側の娘細胞が繰り返し分裂することで生じていることが分かった。

皮層の多層化や通気組織形成の機構を分子生物学的に解析するため、根の放射パターン形成に関わる遺伝子であるSHORT-ROOT,SCARECROWC. hirsutaでのオルソログ遺伝子の単離を試みた。これまでに、類似性の高い遺伝子の部分配列をSHORT-ROOTで約1500bps、SCARECROWで約800bps得ており、現在、全長配列の取得を試みている。


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