| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-160

水生植物の窒素獲得様式と根の呼吸特性

*中村元香(千葉大・理),中村隆俊(東農大・生物産業),土谷岳令(千葉大・理)

湿原などの低酸素土壌に生育する水生植物は、根への酸素供給能力の発達と共に、根の効率的な酸素消費が要求される。供給された酸素の大半は根の呼吸で消費され、呼吸で得られたエネルギーの多くは窒素獲得に使われる。一般に植物はNHとNO3-の無機態窒素を利用するが、窒素に乏しい北方系森林やツンドラに生育する植物種群、またイネでは有機態窒素を利用することが知られている。無機態窒素の利用において、NHは根での吸収・同化に必要なエネルギーが少ないこと、NO3-は地上部でも同化できることが根酸素消費の節約上の利点である。一方、有機態窒素の利用は吸収にエネルギーを必要とするものの、無機態窒素の利用の際に必要な同化に関わるエネルギー消費を省けるため、効率的な根酸素消費にとって有利に働く可能性がある。一般に、陸地に比べ窒素に乏しい湿原に生育する水生植物では、無機態窒素に加え有機態窒素を有効利用することが予測されるが、これまで根の効率的な酸素消費に着目した湿原植物の窒素利用特性については明らかとされていない。本研究では養分に乏しい湿原に生育するホロムイスゲと比較的養分に富む湿原に生育するヤラメスゲを用いて、窒素源がNHのみNO3-のみ有機態窒素のみの3条件で水耕栽培を行い、窒素吸収形態の違いが成長や根の酸素消費に与える影響を評価した。

両種はともにNH条件で根呼吸当たりの窒素吸収効率が高く生育良好となったが、両種はNO3-と有機態窒素条件で異なる反応を示し、ホロムイスゲはNO3-条件で生育良好、有機態窒素条件で生育不良となり、ヤラメスゲではその逆の傾向を示した。ホロムイスゲでは無機態窒素を利用すること、ヤラメスゲではNHと有機態窒素を利用することが根の効率的な酸素消費にとって有利となることが示唆された。


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