| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-138

鳥類のラインセンサスにおける調査回数と種数について

玉田克巳(道環境研)

釧路地方の森林と草原に2kmの調査コースをそれぞれ1ヶ所設定し、繁殖期内にラインセンサスを繰り返し22回行った。この調査結果を使って、各調査回数に応じてすべての組合せを作成し調査回数と確認できる種数の関係を調べた。また主要な種について、調査時期による確認個体数に差があるかを検討した。確認できた種数は森林、草原ともに38種であった。組合せ実験の結果、森林、草原ともに、調査回数が増えれば、確認できる種数は増加し、種数確認曲線は平衡状態になることはなかった。5回の調査確認できる種は森林で平均51%(範囲34-71%)、草原で平均51%(範囲32-71%)で、90%以上の鳥類を確認するためには森林で13回、草原で17回の調査が必要であった。しかし、確認できた種のうち、ルート沿いで繁殖ナワバリを形成していた主要な種だけに注目すると、2回の調査で、森林では平均89%(57-100%)、草原では平均87%(56-100%)が確認でき、両コースともに5回で平均99%が確認できることが明らかになった。確認個体数は、森林ではハシブトガラ、ヒガラ、シジュウカラ、アオジの4種、草原ではノゴマ、ノビタキ、アオジ、オオジュリンの4種で有意な差が認められ(G検定,p<0.05)、季節によって異なることが明らかになった。これらのことから、ラインセンサスは、主要な種については2回の調査でほぼ確認することができるが、主要な種以外も含めると、調査回数が多いほど、確認できる種数が多くなることが明らかになった。また確認個体数は季節によって異なることが明らかになった。出現率などを考慮すると5回以上の調査が望ましく、個体数の季節変化を把握するためには、繁殖期を等間隔に分割して、異なる時期に調査することが良いと思われる。


日本生態学会