| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-174

河川水を用いたオオミジンコの繁殖影響に関する研究

*多田満(国環研・生物), 小神野豊(国環研・リスク), 酒井学(横浜市環境研), 石母田誠(信州大・工), 宮原裕一(信州大・山岳科学)

河川には、住居、事業所、工場、農地や家畜飼育場などから雑多な排水が流入し、そこに含まれる化学物質(有機・無機汚濁)により生態系に多様な悪影響(総合毒性)がもたらされているものの、原因物質が多岐にわたるため主因の特定が難しい。このような総合毒性を評価するには、まず全体的な毒性を計測する手法の開発とその観測を実施するとともに、毒性の主因となる物質の特定事例を集積して、多発しやすい毒性物質の絞り込みと相乗効果などの複合影響の検出に務めることが必要であると考えられる。本研究では、標準試験生物であるオオミジンコ(Daphnia magna )を用いて都市部と農村部の河川水の毒性試験(21日間繁殖試験)を行なうとともに、農薬分析などにより主たる毒性物質の同定を進めて、総合毒性の発現パターンを環境の違う河川を比較しながら把握し、繁殖における総合毒性発現プロセスの解明に迫ることを目的とする。そこで、河川水は、平地農耕地河川(霞ヶ浦に流入する利根川水系の4地点)、平地都市河川(鶴見川水系の3地点)、さらに盆地農耕地河川(諏訪湖水系の2地点)から採取した。このうち、農耕地河川は農業排水による汚染、都市河川は農業排水と生活排水による汚染が生じていると想定し、所内雨水調整池は目立った汚染がない対照として設定した。試験の結果、各地点の汚染(殺虫剤フェニトロチオンなどの農薬が主因)による繁殖影響(産仔数の減少)の季節変動が明らかになるとともに、繁殖影響には、親個体の試験途中の死亡によるものと成長阻害によるものの2つのパターンがあることが明らかとなった。


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