| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-207

オオシロアリの触角におけるカースト特異的発現遺伝子

北大・環境

社会性昆虫のコロニーでは、異なる役割を果たすカーストが存在し、巧妙に組織化された労働効率の高い集団行動(分業)が行なわれているため、コロニーレベルの適応度が高められている。その組織化に不可欠であるのが、カースト間または同一カースト個体間でのコミュニケーションであり、そのコミュニケーションでは様々な化学物質(フェロモン)が重要な役割を果たしている。これまで、社会性昆虫の分業システムにおいて、どのような化学コミュニケーションによってどのようなカースト間・個体間相互作用ネットワークが形成されているかは明らかになっていない。これを解明するためには、フェロモン物質の同定とともに、カーストごとのフェロモン受容能に違いがあるかを明らかにする必要がある。しかし、これまでフェロモン受容に関する研究は社会性昆虫においてはほとんど行われていない。

シロアリは社会性昆虫のなかでも特に複雑な社会を形成する。また、それらは木材の中、つまり暗闇の中で生活しているため、視覚が関わるコミュニケーションや行動制御はほとんどない。そのためシロアリの分業においては、フェロモンなどから得る嗅覚情報が特に重要であると考えられる。そこで本研究ではオオシロアリを材料とし、カースト間で化学物質受容能に関する違いがあるか調べることを目的とした。ワーカーとソルジャーについて、重要な嗅覚器官である触角からRNAを抽出し、ランダムプライマーを用いたディファレンシャル・ディスプレー法により、発現遺伝子を比較した。その結果、カースト特異的発現遺伝子の候補として、46の塩基配列を同定した。これらの遺伝子断片について、定量PCRによりカーストごとの遺伝子発現量の比較と、遺伝子全長の塩基配列の解析と相同性検索による遺伝子機能の推定の結果を報告する。


日本生態学会