| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-208

シロアリ生殖虫のワーカー誘導に対する有性・単為生殖で生まれた個体の感受性

*滋田友恒,北出理(茨城大・理)

シロアリ社会は、ワーカー、ソルジャー、ニンフ、生殖虫等のカストにより構成される。ヤマトシロアリの場合、卵から孵化した幼虫は3齢で、将来有翅虫になるニンフか、無翅のワーカーのどちらかに分化する。一次生殖虫(王や女王)がいない場合、ニンフはニンフ型幼形生殖虫に、ワーカーはワーカー型生殖虫に分化する。

Hayashi et al. 2007は、交配実験で生まれた卵を生殖虫と隔離して飼育した場合、両親のタイプ(ワーカー型・ニンフ型)が子のカスト比と性比を決定することを示した。この仕組みは、X染色体上にある1遺伝子座のメンデル遺伝モデルで記述できる。また、本種は単為生殖能を持ち、単為生殖で生まれた子は全遺伝子座でホモ接合になり(Hayashi et al. 2003)、上の実験で、モデルが予測する通りに、全てメスニンフに分化する。

ただし、生まれた卵を生殖虫と共に飼育すると、生殖虫によるワーカー誘導の影響で、「ニンフ遺伝子型」の子の一部がワーカーに分化する。

本研究では、単為生殖と有性生殖で生まれた「ニンフ遺伝子型」個体間での、生殖虫によるワーカー誘導の感受性の差を調べた。生殖虫の影響がない場合に、娘がすべてニンフになる交配(ニンフ型生殖虫メス×ワーカー型生殖虫オス)と子が全てメスニンフになる単為生殖を行わせ、生まれた卵を一次生殖虫ペアと共に飼育し、娘のカスト比(ニンフ・ワーカー)を調べた。その結果、単為生殖ではワーカー化した個体の割合は、親生殖虫の違いによって、大きく異なった。有性生殖(内交配・外交配)では、ワーカーに分化した個体の割合は中程度であった。ワーカー誘導に対する子の感受性は、おそらく遺伝的影響を受けていると考えられる。


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