| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-218

海岸クロマツ林−山地照葉樹林におけるアナグマの生息環境

*竹内亨,松木吏弓,阿部聖哉,梨本真(電中研・生物)

ニホンアナグマの知見は、主に落葉広葉樹林や針葉樹植林を主体とした地域での研究成果に絞られている。ユーロッパにおけるアナグマでは、地域によって食性や生息環境等が大きく異なる事例が知られており、ニホンアナグマにおいても、クロマツ林や常緑広葉樹林における環境利用を明らかにすることは重要である。

本研究では、鹿児島県の海岸沿いのクロマツ林から山地の常緑広葉樹林及び植林地の景観に生息するアナグマを対象とし、その生息環境の選択性を明らかにすることを目的とした。研究対象範囲は、薩摩川内市の北西部、約15km2の広さとし、植生タイプとして最も広い面積を持つ森林(82%)として、海岸沿いにクロマツ植林、内陸部の山地には、自然度の高いスダジイ群落等を含む常緑広葉樹林やスギ・ヒノキ等の針葉樹植林が広がっている。集落や農地、人工地、裸地などの非森林域は主に北西部から南西部の一部に存在している。

秋季(2006年11月)、春季(2007年5月)、夏季(2007年7-8月)の3時期に、対象範囲内に設置した10個の調査区内において、網羅的にフィールドサイン調査を実施し、糞場及び巣穴場を探索した。糞場から回収した糞をDNA分析することにより、タヌキ等からの確実な種の識別を行った。これらの結果、225個の巣穴と510個の糞場を確認することができた。

生息環境の選択性を解析するための環境変数として、森林タイプ、傾斜、斜面方位、水場や道路からの距離等を現存植生図およびIKONOS画像から抽出し、アナグマによって選択された環境の選考性解析を行った結果、クロマツ植林、常緑広葉樹林、スギ・ヒノキ植林での環境利用に大きな違いが生じていた。ポスター発表では、本解析結果と餌利用状況も併せた考察を報告する。


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