| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-224

可塑性か、遺伝か?イタチハギマメゾウムシにおける体サイズの緯度クライン

*定清 奨,石原 道博(大阪府大・院・理)

ある形質が緯度とともに連続的に変化する現象は緯度クラインとして知られている。体サイズの緯度クラインは様々な生物に見られる現象であり、多くは遺伝的な違いに由来する。しかしながら、可塑性が緯度クラインの形成に重要な役割を果たす場合もある。寄生性の昆虫の場合、ホストのサイズは体サイズを決定する重要な要因となりうる。もしホストサイズに緯度クラインが存在するなら、体サイズも緯度クラインを示すかかもしれない。そこで本研究では北米原産の外来種であるイタチハギマメゾウムシを用いて、(1)体サイズとそのホストであるイタチハギの種子サイズの緯度クラインの有無、(2)遺伝と可塑性のどちらが重要な役割を果たしているのかを調べた。外来種である本種が緯度クラインを示すかどうかは、外来種の定着や進化のプロセスを考える上でも重要である。

イタチハギマメゾウムシの体サイズは緯度とともに増加した。またイタチハギマメゾウムシがいる集団では、イタチハギの種子サイズも同様の緯度クラインを示したが、いない集団では示さなかった。この結果は、高緯度地域では利用する種子サイズが大きくないと定着できないことを示唆している。次に体サイズに遺伝的な違いがあるかを調べるため、緯度の異なる3つの集団を大きい種子だけを用いて、22℃, L16: D8の恒温条件下で飼育したところ、体サイズに有意な違いはなかった。しかし、幼虫を様々な種子サイズで飼育した実験では、ホストサイズと体サイズに正の相関が見られた。このことから、体サイズの緯度クラインは遺伝的な違いによって生じているのではなく、利用するホストのサイズによって可塑的に生じている事が明らかになった。


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