| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-254

ミナミアオカメムシの飛翔能力が分布拡大に与える影響

*守屋伸生,藤崎憲治(京大院・農・昆虫生態)

近年近畿圏において、ミナミアオカメムシ Nezara viridula (以下ミナミアオ)は、同属近縁種であるアオクサカメムシ N. antennata (以下アオクサ)を駆逐しながら、その分布を北方へと拡大している。これまでの研究から、その要因として、気候温暖化によるミナミアオの越冬生存率の上昇、ミナミアオの高い増殖率、両種の種間交尾などが考えられてきた。しかし、分布の拡大及び置き換わりにおいて重要であると考えられる両種の移動分散能力については、これまでほとんど明らかになっていない。そこで、本研究では飛翔能力に着目し、両種の移動分散能力の比較を試みた。

2009年7〜9月に近畿地方の様々な地域において採集した個体を、スピードガンによって飛翔速度を計測した後、フライトミルを用いて飛翔能力を23時間計測した。計測が終了した個体は解剖し、雌については、交尾の有無及び成熟卵の有無、雄については、付属腺発達の有無を確認した。これらから、飛翔個体割合、推定飛翔距離、生殖状態別の推定飛翔距離について、両種で比較を行った。その結果、ミナミアオはアオクサよりも飛翔個体割合が少なく、またアオクサ雄が最も飛翔能力が高かった。また、生殖状態によって、両種の推定飛翔距離に傾向の違いが見られた。以上のことから、ミナミアオはアオクサと比較すると、飛び立ちにくく、かつ飛翔能力が低いということが示された。

これらのことから、両種の移動分散能力の違いがミナミアオの分布拡大とアオクサとの置き換わりにどのような影響を及ぼすのかについて考察する。


日本生態学会