| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-263

ヨモギホンヤドカリではメスの産卵までの日数がオス間闘争に影響を与える

*鈴木祐太郎(北大・水産), 竹下文雄, 和田 哲 (北大院・水産)

メスをめぐるオス間闘争は普遍的な個体間相互作用のひとつであり、資源保持能力(RHP)や、資源の価値(RV)などが、その結果に影響を及ぼす。ホンヤドカリ属のオスは、繁殖期になると成熟メスの貝殻を掴んで交尾までの数日間交尾前ガード行動を示し、ガード中のメスをめぐってオス間で闘争する。また、本属ではメスの体サイズと産卵数に相関がみられる。したがって、本属のオスにとっては、メスのサイズと交尾までの時間がRVの指標として挙げられる。本研究ではヨモギホンヤドカリPagurus nigrofasciaを対象種とし、まず、オスがこれらの指標を基準として配偶者選択している可能性を検討するため、配偶者選択実験をおこなった。次にオス間闘争実験をおこない、これらのRV指標とオスのRHP に影響を及ぼす2つの要因 (体長とオーナーシップ) が闘争結果に及ぼす影響を検証した。闘争実験では、野外でガード中のオスをランダムに、メスをガードした状態の“オーナー”と、メスをガードしていない“チャレンジャー”の二群に分け、それぞれを遭遇させた。

その結果、オスは交尾直前脱皮までの日数のみを配偶者選択の基準としていて、日数の短いメスを選択した。オス間闘争実験でも、体長とオーナーシップに加えて、脱皮までの日数が闘争に影響を及ぼしていた。これより、本種のオスはメスのサイズではなく成熟度合いをRVとして評価し、配偶行動時の意思決定に利用していることが示唆される。また、メスの脱皮までの日数の効果は“オーナー”で相対的に強かった。このことから、オスがメスのRVについての情報を得るためにはメスに触れてガード行動をする必要があると考えられる。一方で、“チャレンジャー”がガードしていたメスの脱皮までの日数もまた闘争結果に影響していた。このことから、RVが過去の経験として闘争に影響する可能性が示唆される。


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