| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-269

目立つべきか?不味くあるべきか?局所的捕食圧が促進する警告色の多様性機構

*持田浩治(京大・理・動物)・北田稔(長大院・生産)・池田光壱(長大院・生産)・高谷智裕(長大・水産)・荒川修(長大・水産)

警告色とは,不味さと関連した目立つ色彩のことを言う.この警告色に関する研究の多くは,歴史的・伝統的に,警告色の目立ち易さがその個体の不味さの程度を表す正直なシグナル(Honest signal)であることを前提としてきた.一方で,野生動物の警告色の目立ち易さと不味さとの関係を調べた実証研究は,両者の間に正の相関(Honest signal)だけでなく,負の相関(Dis-Honest signal)や非相関(Dis-Honest signal)が見られることを報告している.またこれらの現象を説明するために,様々な理論モデルが構築されてきた.本発表では,アカハライモリを対象に,警告色の目立ち易さと毒性の関係について解析した結果を報告する.それらを簡単にまとめると,野生個体の警告色と毒性の間には,表現型レベルでは相関関係が検出されなかった.しかし卵から室内飼育した個体の警告色と毒を獲得する能力の間には,負の相関関係が検出された.これらの結果は,共に,イモリの警告色の目立ち易さが,その個体の不味さの程度を表す正直なシグナル(Honest)でないことを示唆するものであった.最後に,本現象を生息環境の毒資源供給の不安定性と局所的な捕食圧の違いから説明する.


日本生態学会