| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-276

タガメの雌は卵塊を保護する雄を選択するか?

門司麻衣子(京大・理)

タガメ<i<Kirkaldyia deyrolli(Heteroptera Belostomatidae)は日本の本州以南に分布する水生昆虫であり、卵塊を雄親が単独で保護することが知られている。動物における子の保護は一般的に雌親によって行なわれるが、タガメは性的役割が逆転している。このように雌雄で性的役割が逆転している種において、繁殖様式のメカニズムを詳しく知ることは種における性的役割が進化の過程でどのように決定されてきたのかを考察する上で重要である。本研究は雌個体の行動に着目し、繁殖相手として単独雄と保護を行っている雄を比較した場合、雌が保護を行っている雄に対して選好性を示すかを検証した。雌の選好性の有無を検証するため、卵塊の有無で条件に差を付けた2体の雄の乾燥標本を雌に提示し選択実験を行なった。結果、実験個体数が少ないため統計的な差は出なかったが、特定の雌個体が卵塊の周囲で長時間定位することが観察された。また、未交尾の雄に対して卵塊を提示した所、卵塊に対して保護行動をとる個体が観察された。これらの結果と観察から、本研究では雌の選好性の存在は明らかにならなかった。しかしタガメの雌には卵塊に対する行動に大きな個体差が見られ、特定の雌個体に対しては卵塊の有無が滞在時間に影響する可能性が予想される。また、未交尾雄が卵塊を保護する行動は、雌の選好性に対応する行動とも考えられる。雌の選好性の存在を確かめるにはより厳密な実験系と個体数が必要である。


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