| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-285

Levy walkにおける最適なパラメーター

*堀部直人,池上高志,嶋田正和

動物の餌探索行動において、Levy flightとよばれるフラクタル性を有する確率過程に従って移動することは、餌がランダムかつ少量存在する場合の最適採餌戦略であるとされる。Levy flightにはLevy indexと呼ばれるパラメーター(μ)が存在しており、最適なパラメーター値についてさかんに議論がされている。例えば、Viswanathan(1999)らによる解析的な計算では、その値は2とされる。一方Sims(2008)らは、餌の分布に応じて最適なパラメーター値が異なってくるというシミュレーション結果を示している。つまり、Levy flightは最適な餌探索戦略ではあるのだが、最適なパラメーター値に関しては未だ議論が分かれているのである。

我々はこの混乱は餌探索方法をどう実装するかに起因していると考えている。例えば、移動と探索を分けて考えているか、餌は発見後消滅するのか、探索範囲は有限か無限か、採餌効率の評価はコストあたりのベネフィットか、ベネフィット-コストという絶対値であるか、などである。本研究の目的は、これら条件と最適なパラメーター値の関係を明らかにし、最適なパラメーター値に関する議論を整理することである。そのために我々は、限定された条件下での解析的な計算、ならびに遺伝的アルゴリズムを用いた進化シミュレーションを行っている。現在までに、Levy indexが小さいほど探索効率が向上するような探索条件が存在することなど、先行研究では見られないパターンを含めたいくつかの関係が明らかとなった。さらに、mean squared displacementという統計量により軌跡を特徴づけることで、random walkやcorrelated random walkといった他の確率過程とも効率の比較が可能になると期待しており、その展望を紹介する。


日本生態学会