| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-321

精子置換による配偶者選択への影響

*住友宏幸(山形大・院・理工),廣田忠雄(山形大・院・理工)

メスが多回交尾する場合、オスが出会うメスはすでに交尾を経験している可能性が高く、精子競争が起こりやすい。精子競争が激しい場合、多量の精子を送る、交尾栓、前のオスの精子をかきだす、精液中タンパクでメスの産卵速度を高める、婚礼贈呈、生殖器で物理的にメスを抑えるなどの戦術を進化させている。

精子競争の強さは、個体群密度や性比によって常に変化するため、オスの精子競争に対する対策も変化するだろう。Plodia interpunctellaでは、羽化後のライバルオスの多さを幼虫期の高密度によって認識し、精巣サイズを大きくする。Poecilia mexicanaでは、通常一貫性のあるオスの雌に対する好みが、他のオスの存在により変化することが知られている。

そこで、オオヒラタシデムシEusilpha japonicaを用いて、オスの精子競争に対する対策の可塑性を調べた。E. japonicaはオスがメスの触角を噛み、挿入後も長くマウントし続け交尾後ガードを行う。E. japonicaが交尾しているかどうかは触覚を噛む行動で容易に判断でき、オスの精子競争に対する可塑的な行動を調べるのに適している。本研究では、オス1匹、3匹、10匹をそれぞれメス3匹といっしょにして人工的に性比を変化させることで、オスが周りのライバルオスの多さを認識し、マウント時間を変化させるのではないか検証した。また、オスバイアスではなく全体の密度が影響している可能性もあるので、オス3×メス10とオス10×メス3の比較も行った。

結果、潜在的なライバルオスが多いほど挿入の有無に関係なくマウント時間が長かった。この結果は、E. japonicaのオスが、周囲の潜在的なライバルオスを認識して交尾後ガードを効果的に行い、限られたメス資源を有効利用していることが示唆される。*演題変更「OSRに応じたマウント時間の調節」


日本生態学会