| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-014

農地および庭園におけるアズマモグラの空間利用と活動様式

森田光一・大野浩史(富山大・理)・河合幸樹(富山大院・教育)・吉村一輝(富山大・教育)・*横畑泰志(富山大院・理工)

アズマモグラMogera imaizumiiは地下生活をしているため、野外での直接行動観察がほぼ不可能である。演者らは富山県(富山市友坂3頭、同吉作1頭、射水市本江1頭、魚津市三ヶ1頭)および岐阜県(飛騨市高野1頭)の5箇所の農地および庭園における本種7頭の行動を、重量約2gの電波発信器を用いたラジオテレメトリーによって追跡した。

友坂の3頭の行動圏は水田の畦や堤防の土手、道路脇であり、重複の極めて少ない排他的な縄張りであった。その総延長は大型の個体ほど長く、156〜297mであった。他の4箇所は上記の順に梨園、民家の庭、公園の芝生、畑地であり、行動圏面積は最外郭法で407〜766m2であった。いずれも休息時に連続的に使用する1箇所の巣が確認され、友坂の3頭では巣から離れた位置に時おり用いる休息場所が各1箇所みられた。これは行動圏が細長い形になるためであろう。吉作と本江以外の3箇所で巣を発掘し、主な巣材は吉作では梨の葉、三ケと高野ではビニールシートなどの人工物であった。

巣以外の場所で活動する時期(活動期)はどの個体でもほぼ1日に3回で、日本や国外での他の事例と一致していた。友坂の3頭の活動期はほぼ一致しており、次の式で表わされる非類似度は0.610であった。

         非類似度=1−2C/(A+B)

(A、B:2頭のモグラの総観察時点数、C:2頭が各々の巣に同時にいた時点数)

この値は、友坂の調査日の異なる同一個体間では0.557で最も小さく、地域と調査日の異なる組合せ間では0.631と最も大きかった。このことは、活動期の一致に個体間関係がある程度関与していることを示唆している。


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